2001年中小企業白書より抜粋(第1章第3節 事例34)
クリーニングサービス
 我が国の家庭向けクリーニングサービスに対する需要は減少傾向にある。総務省統計局「家計調査報告」によれば、1世帯当たりの洗濯代は平成4年の19,243円をピークに減少に転じ、平成12年には12,456円と8年で約35%低下しており、消費者のクリーニングサービスに対する節約志向がうかがえる(第213-10図)。
 加えて、最近はスーパーマーケットやコンビニエンスストア等と協力して取次店を増加させ顧客拡大を狙う動きも見られる。全国クリーニング環境衛生同業組合連合会の調査によると、平成11年の自家処理施設を持つ一般営業店は48,103店と漸減傾向にあるのに対し、クリーニング取次店数は115,896店と平成4年以降増加傾向にある。
 このようにクリーニング店の経営環境は大きく変化しているが、業績改善の可能性は十分存在する。以下に紹介するのは、情報システムを活用して商品管理手法を改善し、生産性を向上させているクリーニング協業組合である。

第213-10図 1世帯当たりの年間洗濯代
第213-10図 1世帯当たりの年間洗濯代


<事例34 業態の特性に合わせてPOSシステムを応用し、受け渡し時間の短縮・商品紛失率の低下を実現したクリーニング協業組合>

 A協業組合(徳島県)はクリーニング店による協業組合である。同組合は業務を抜本的に見直し、POSシステムを導入して商品管理能力・生産性の向上に成功するとともに、料金割引サービスなど新たなサービスにも応用している。
 同組合は昭和45(1970)年から活動してきたが、大型店の進出などにより利益を確保することが難しくなってきたため、これまでの業務を見直したところ、商品の紛失が多い等、商品管理能力に大きな問題があることが判明した。
 同組合は、小売業等で商品管理に活用されているPOSシステムを応用すれば、商品の管理能力を向上できるのではないか、と考えた。しかし、中小クリーニング業でPOSシステムを応用している例は少なく、同組合は業務を見直しながら、業態の特性に合わせた独自のシステムを業者とともに構築することにした。結局、システム業者の選定からシステムの稼働までに2年以上の期間を必要とした。
 新しいシステムは平成10年7月に稼働した。このシステムの下では、顧客から衣類を持ち込まれると、各店舗で従業員が商品の種類・件数等を端末に入力する。伝票の記入・整理等の作業は省略され、これにより商品の受け渡し時間を半分近く短縮することに成功した。
 また、端末への入力と同時に、バーコードの入ったタグがプリントされ、商品に付けられる。このバーコードを商品の移動元、移動先でスキャニングすることで、商品がどこにあるか容易に確認できるようになり、商品の紛失が減少した。
 入力情報は工場にも送られる。この情報を基に、各工場では毎日入荷される衣類の種類・分量を把握できるようになり、効率的な作業計画を立て、より低いコストで作業ができるようになった。
 さらに、各店舗で入力した情報は本部で蓄積され、顧客層別サービス(事例69参照)や料金割引サービスの実施などに応用されている。
 新しい情報システムは順次各店舗に導入されており、これにより商品管理が容易になり生産性が向上している。