2001年中小企業白書 掲載事例(第1章4節 事例39)
<事例39 社内での商品管理を単品レベルに細分化し、仕入先・販売先の理解を得てローコストオペレーションを実現>

 A社(徳島県、従業員数29人)は、手芸卸売業界で初めて電子受発注システムを実現し、ローコストオペレーションを可能とした企業である。電子受発注システム構築の成功の背景には、1)社内での商品管理基準を単品レベルに細分化し、POS端末の稼働が可能な環境にしたこと、及び2)仕入先・販売先について電子受発注システムへの理解を求めたことがある。
【自社の管理基準を単品レベルに細分化】
 同社の過去の営業は、手芸材料店を1軒ずつ訪問しながら受注・納品を繰り返していたため、営業担当者1人当たりの低い生産性と高コスト構造を招いていた。そこで社長は、当業界にあってどのようにすれば生き残っていけるかを考えた結果、商品の管理基準をケース単位ではなく、単品での単位価格へと細分化し、POS端末で一括管理できるようにした。また、例えば布地関係の販売単位を10cm単位で価格決定するなど、端数の要求にもこたえられるようにした。さらに、手芸材料は多品種少量という業界特性から、商品にバーコード(JANコード)が印刷されていないケースが多いが、ベンダーにバーコードの採用を呼び掛けた。その結果、受発注の単位レベルが情報システムの稼働レベルと一致するようになった。
【仕入先・販売先に理解を求め、電子受発注システムを構築】
 仕入先メーカー及びベンダーとは、EDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)について何度も話し合い、かつ説明会を開いてJANコードの必要性を説き、対応への同意を取り付けた。一方、販売先ともEDIを構築し、納品伝票の入力作業をなくすことができた。また、EDIの構築を望まない販売先への納品は、受注メモを基に商品を品出しした後、JANコードを読み込むことで納品伝票が自動的に出力されるようなシステムを構築した。
 この結果、仕入先-A社-販売先がEDIによって結ばれ、1)価格検索時間の削減や価格の間違い防止、及び手書き伝票の起票作業がなくなったことによる省力化、2)売掛金の請求業務や買掛金の入力作業の短縮化、など様々な面で効率化が図られることとなり、ローコストオペレーションが実現された。また、取引先にとっても、正確な商品データの共有を始め、コストの削減や、作業ミスが減少したこと等により、同社に対する信頼を高める結果となった。