成功するIT導入

 〜ITと現場の業務を徹底的にすりあわせることから〜 

(日経IT21 2002.10月号記事より)

 IT活用の事例として徳島市のクリーニングチェーン「徳島セルフドライ協業組合」をとりあげる。同組合はIT導入により、ワイシャツ1枚98円という低価格と翌日4時渡しの確約という短納期を実現し、クリーニング業界の市場規模が10年前の4割減という厳しい環境にあって、1店舗あたりの売上高が10年前の5割増と増収基調にある。

 同組合のシステムの特徴は、取次店と工場が密接に連携されているところである。同組合は当初IT導入の対象を取次店に限定して考えようとしていたが、小林から「工場、本部を含めたトータルシステムを導入しないと効果が上がらない」との説明を受け、現在のITシステムの概要が決まった。しかし、現場とのITツールや実務での運用に関するすり合わせで大きな時間を費やした。IT導入による業務の効率化とともに当時の複雑な料金体系(1500種類)の簡略化を主張した小林に対し、工場側が売上減少につながると猛反発したためだ。

 小林は同組合のプロジェクトチームとともに取次店の受付作業の実態調査を行い、取次店の従業員が料金パターンを覚えきれず低価格で受け付けている実態などをまとめ工場側に報告した。精力的に現場と業務・ITのすり合わせを行いプロジェクトへの協力を求め、プロジェクトが動き出した。「IT導入による業務の効率化といっても現場がついてこないのは当たり前。”これまでのやり方では生き残れない、変わらなくてはいけない”という社員や経営者の意識改革が不可欠だ」(小林)という。このように同組合は社員・経営者の意識を変革し、ITと業務を徹底的にすり合わせ、高度な顧客サービスと業務効率化を同時に実現でき現在の成果となったわけた。